再出発・専門を持つ

2009/1/8() 午後 4:57

 

全部新しく再出発  そして慎重にやれば成功する (90年代後半の林輝太郎先生の講演録からの抜粋)

 

○再出発

  林は最初からプロ相場師に金で買えない貴重なことをたくさん教わった。

しかし、それが本当に身に付いたのは、相場で損して破産してからだ。

 

  「もうこんな思いはしたくない。相場をやり直そう」、そうした”やり直し”がいま振り返ると5回くらいあった。

  その経験から、”やり直し”は今まで勉強したことは全部忘れて一からやり直さなければいけない。

勉強したことに対して、懐かしさがある。だから、ある部分はそれを残そうとする。また、ある部分は付け加えようとする。

これがいけない。やり直しとは学習の順序を新しくすることだからだ。

 

  全部新しく、再出発。

 全てを新しくして、基本からやれば、いままでの経験が生きて、2,3ヶ月で以前の儲け・技術の水準を越す。

これは決して大げさではない。何年もの間いろんな人で実験している。

 

 ○専門は強いもの

 専門というのは強いものだ。

ところが、「今度は小豆が動いたから小豆、今度はゴムが動いているからゴムをやろう」と、あれこれやる。

相場で専門を作らないのは、すごく不利なことだ。

  皆さん実生活で仕事をしていて、専門を持つことがどれほど強いかはわかっている。それなのに相場の場合は専門を持たない。

 

  相場における専門とは、『銘柄の専門』と『やり方の専門』を持つことだ。

それでないと、絶対に成功しない。

たとえば「小豆をサヤすべり取りでやる」というように。

  自分の専門については狭く、狭く絞る。

サヤ取りならサヤ取りだけ水準を高めればいい。狭ければ狭いほどいい。早く慣れるし、早く上手になる。

 

  そして、専門の銘柄、専門のやり方で価格変動の波に乗る。

いろいろな値動きを見ても、専門の銘柄を、専門のやり方でやるのであれば、

出来るか出来ないか、取れるか取れないか、波に乗れるか乗れないか、判断できるようになる。

 

そして周辺知識は広く浅くでいい。自分の専門は狭くてもいいから水準を高める。

 

  相場の場合、ある段階以下はみんな損。ある段階以上の人だけが儲かる。

 相場というのは選択肢が多く、いろいろな やり方がある。

片張りの「売り」「買い」。サヤ取り、ツナギ等、いろな流儀があり、やり方も何千種類もある。

初心者の場合、初心者でも利益を出しやすいやり方を選択すればいいのに、初心者ほど難しいやり方をやりたがる。

これでは失敗するに決まっている。

 

  誰もが「一番儲かるやり方をやりたい」という。それは人情としてわかるが利益率なんてみんな同じだ。

利益率は上手下手によって上下するものなのだ。

 

  危険性が高ければ利益も多そうだが比例しないし、危険性が低くて利益は多いやり方も相場の中にはたくさんある。

 たとえばサヤ取りがそうだ。

ある おばさんがサヤ取りをやって5年で1億円になった。誰でも 5年間ひとつのことをやれば上手くなる。

 

  しかし、サヤ取りは、サヤが動かないと出来ない。

そういうときに、なにか他のことをやりたくなる。それがいけない。何ヶ月でも休んでいればいい。

サヤすべり取りもそう。サヤすべり取りっていうのは、ひと区切りの利益はものすごく大きい。

ところがチャンスが来るまで、待っていられない。そして他のことに手を出して損をしてしまう残念なケースが多い。

 

○波乗り

3ヶ月の波乗りの一番楽に取れる、一部分だけとって、後は知らん顔をしていればいい。

それを1年に2回か3回、1回でもいいから取る。その方が楽に儲かる。

 総資金に対して、年間3割取ったら、手仕舞って、後、年末まで遊んでいればいい。

 

 1000万円で3割取っていけば、9年で1億円になる。そして1億円から10億円になるのには9年かからない。

とにかく石にかじりついても、1億円を達成しなければダメだ。

  この社会は面白いことに金のあるヤツはなお儲かる。貧乏なヤツはなお損するように出来ている。

だから、絶対に冒険をしてはいけない。コツコツとやる。

 

○相場の勉強

  みなさんがこれからゴルフのプロになるのは不可能だ。

ところが相場の場合は、年齢や性別や地位に全く関係なく、順序を踏めば誰だって上手になれる。

 相場の勉強、これも世の中のあらゆる勉強と同じ順序、つまり基礎から応用という過程を経て上手になっていく。

単純なことからやっていく。土台をしっかりする。土台、基礎があやふやじゃ儲かりっこない。

 

  本を読むと基礎はとても易しく感じる。本を読んで、わかったと思いがちだが、頭の中で理解しただけで、実際はできるようになっていない。

それなのに本を読んだだけで基礎ができると思い込み、基礎練習を抜かしてしまう。

 

  今まで体験したことのない事態に直面すると、人間というのはおかしくなる。

相場における「値動き」というのは、年中、未体験の領域へ進んでいく。

そうした未体験の領域の恐怖、想定外の「値動き」に耐え、対応できる基礎練習をしておかなくてはならない。

  基礎とは相場の波に乗る練習売買を繰り返すことによって、変動感覚を身につけることである。

 

  それを「これから値動きがどうなるか不安だ。未体験の領域に進むのだから、いろんな資料を取りそろえて万全を期そう」とする。

これは逆効果になって迷うばかりで絶対にダメ。

 道具を場帖、グラフに限定して、単純な基礎練習をやるべきだ。

 

○グラフ

道具というのは、業務用の道具を使わなければいけない。グラフは見るものだから、きれいに、見やすい大きなグラフを描きなさい。

 

グラフを見ると、このときにどういう材料で下がったか、どういうニュースで上がったか、そんなことはもう忘れている。

 

  ただ、上げ下げの周期、うねり、値動きのクセ、そういう特徴が一目瞭然だ。

  一目瞭然というのは自分で今度やるときに 「そろそろ底じゃないか。そろそろ天井じゃないか」 という感じがよく解る。

もちろん年がら年中当たるわけじゃあない。

 

  また、ここで上がるだろうけど自分の出番ではない。そういうところもわかる。

 上がるであろうけども自分の出番では無いんならやっぱりパスした方がいい。

 

  壁に貼っていつも眺めたほうがいい。普通の家庭では大きなグラフを貼る場所がないから巻いておく。そして床に広げて見ればいい。

 

○心理の慣性を絶つ

 人間の心理には慣性というのがある。

 慣性というのは物理学の用語で、「動いている物体は外から力を加えない限り永久に動き続ける」というもの。

球を動かしても止まるのは摩擦があるからで、摩擦がなければ永久に動き続ける。

 

  心理の慣性とは、たとえば下げ相場だといつまでも下がるような錯覚をおこす。自分の気持ちの切り替えができないからだ。

 切り替えをする唯一の道は、玉をゼロにすることだ。区切りをつけ、休む。

そうして心理の慣性を絶つ。

 

  商品相場の場合、季節、年度、暦年、だいたい3ヶ月またはその倍数の周期がある。

ところが心理の慣性で 3ヶ月上がると、もっともっと上がると思う。

 玉を一旦手仕舞まって冷静になる、つまり心理の慣性を絶つと、それにより、気持ちを新しくできる。

 

  相場が上げから下げ、下げから上げに転換する時も、気持ちの切り替えが難しい。

これは皆さん失敗したときのことを振り返ればわかる。

だから、休み、区切りをつける。心理の慣性を年中絶つ。

一区切りつけた後、奥さんでも連れてうまい料理食いにいってお祝いをして、心理的にも区切りをつければよろしい。

 

  一般の人が我々相場で生活している、あるいは成功した人たちに持っている偏見が2つある。

 一つは「年中やってんだろう」、一つは「そんな何億円も残したんだから、たくさんやるだろう」 全然逆なんだ。年中休んでる。

 

 6ヶ月休んで3ヶ月の上げ相場の半分だけ確実にとる。後は知らん顔している。

また半年休む。また3ヶ月のうち確実な1ヶ月だけをとる。それが一番上手なやり方。

 

○中断

  相場のやり方は、ゼロの状態から売りなり買いなりを仕掛ける。

まず一枚やってみる。もし1000万円の証拠金があったって試し玉は1枚でいいんだ。

そして玉の増減があって、手仕舞いとなって終了する。仕掛け、玉の操作、手仕舞い を一連のものとしてやる。誰がやっても例外がない。

 

  ところが下手な人は、買った株が下げたら塩漬け。

 引かされら持ち続けて、「当限になるまでには上がるだろう」なんて言っているうちに当限は最安値納会する。こういうことは現実によくある。

 損になったのを持ち続けるから、もうものすごい損になる。これは手仕舞いまで行かないで中断するからだ。絶対、中断してはいけない。

 

○ 7つの錯覚

@理屈、理論偏重。

A競争社会における原則を無視する。

  原則と言うより、数学で言う公理と同じ。それを無視する。

 情報なんていうのは、自分に不利に決まっているじゃないか。理屈じゃ分かる。

しかし何かに頼りたいんで、やっぱり情報に振り回される。

  競争社会においては、中立な情報は存在しない。買い方に不利なら、売り方に有利。もちろん逆もある。そうすると、情報は一方に有利で一方に不利だから、情報を入手したらこれはどっちに有利なのか、考える必要がある。

  もう一つの情報の原則、情報は発信者に有利。これは誰でも解る。従って受信者に不利。みなさんがもしインターネットで情報を発信する。自分に不利な情報は絶対に発信しない。ということは受信者に不利なんだ。

 

  企業だって取材に来た新聞記者にお車代を渡して、よりよく書いてもらおうとする。そういう記事は価値があるのか?

 価値があるどころではない。嘘ばかりに決まっている。

 

  株の場合、天井を付けたのが89年12月。

だから89年、90年の2年分くらいの日本経済新聞をゆっくりと読んでご覧なさい。

 「なるほどこれを読んでいたら損するな」とわかる。

  商品の場合だったら、日本経済新聞か業界紙の1年前からの綴じ込みをゆっくり読んでご覧なさい。

「なるほどこれを読んでいたら損するな」とわかる。

そういう新聞を読んじゃいけない。 

 

  もし情報が正しいとしても、先の月面着陸の飛行士と同じで現実に負ける。

またそういうものを読むと、いわゆる市場の人気に汚染されて自分自身を見失なって損をしていく。

 

B確率と可能性を間違える。

Cいろんな指標、あるいは指数は、いかにも値動きと関係ありそうだが、まったく関係が無い。これは一種の迷信。

D学習の順序。これは本当に一般の投資家は間違えている。学習の順序を新しくするのをやり直しと言う。

Eゲーム理論は理論であり間違いないんだが、それを無視する。

F「やり方 (技術)」を無視する。

  上がると思えば買えばいい。下がると思えば売ればいい。そりゃあそうだが、その売り方、買い方、の「やり方」。

見込みが当たっても技術が下手なら損する。

相場において最重要な技術を無視する。これは非常に残念なことだ。