相場戦略研究所

「三猿金泉秘録」より 

「三猿金泉秘録」序文
 大極動きて陽を生じ、動くこと極まりて静かなり、静かにして陰を生じ、静かなること極まりてまた動く。 一動一静あるにその根となる。

米の高下も天地陰陽を巡る如く 強気の象現れてはなはだ高くなり、上がる理極まればその内に弱気の理を含む。 弱気の象現れてはなはだ安くなればその内に強気の理を含む。
万人気弱き時は、米上がるべきの理なり。 みなこれ天性理外の理なり。

 予壮年の頃より米商内に心を寄せ、昼夜工夫をめぐらし、六十年来月日を送りて、漸漸米強弱の悟りを開きて、米商内の定法をたて、一巻の秘書を作り、名づけて三猿金泉録という。

米穀の形象は中まるく上下尖る。まるは陽、尖りは陰なり。天地陰陽の気をうけ、四民をやしなう天下第一の宝なり。

 三猿とは、見猿、聞猿、言猿の三なり。
目に強変を見て、心に強変の淵に沈むことなかれ。只心に売りを含むべし
耳に弱変を聞いて、心に弱変の淵に沈むことなかれ、只心に買いを含むべし
強弱変を見聞とも、人に語ることなかれ。言えば人の心を迷わす
是三猿の秘密なり。金泉録とは此書の名なり。

高安の 理は空理にて 眼に見へず 影も形も 無きものが体(無極)

上の句の心を考ふるに、 法をもて上るとも いつ下がるとも定まらざるが空理なり。空理とみれば 千年に一度も売り買する時節はなし
また下の句の心を考ふるに 影も形も無きものが体とあり。体あれば定式あり 定式あれば売買あり
仏道の定式は五戒 儒道の定式は五常 神道の定式は智仁勇の三徳 みなそれぞれに定式あり

古米おほく 安き値段を新米にうつしたる歳は 空腹上り有る年なり 是を順乗のとしといふ
古米すくなくして 高き値段を新米へうつしたる歳は 空腹下りのあるとしなり。六七八月に強変いづれば まさしく空腹さがりの歳なり 是を変乗の歳といふ

売買の定式は 逆平(ぎゃくへい)順乗のふたつなり

逆平にて平買(たいらがい)にこれを買

順乗とは 上る道理をただしく見つけ 乗買(のりがい)に買を順乗といふなり


慈雲斎 牛田権三郎


時を待て

せくゆえに安きを売りて、あたまから高きを買って からうすを踏む

下がる理も 時いたらねば下がるまじ、売りぜきするは大たわけなり

買いぜきをせぬが強気の秘密なり。いつでも安き日を待って買え

売りぜきをせぬが弱気の秘密なり。いつでも高き日を待って売れ

高きをば、せかず急がず待つは仁。向かうは勇、利乗せは智の徳

売り買いを、せかず急がず待つは仁。とくの乗るまで待つも仁

資金管理

ふところに金をたやさぬ覚悟せよ 金は米釣る餌と知るべし

売買はいくさの備えも同じこと、米商いの軍兵は金

文殊でも備えのたたぬ商いは 高下の変が出ればやぶるる

備へなき商いならば いつにても 損得なしに 商い禁制

半扱商内

「安き日に千両買い、五分か一割飛び上がりたる日、半分仕舞う これ半扱なり

また、五分か一割下がるとき、五百両買足す この商内の仕方を買建半扱商内というなり

売建半扱商内も右同意なり  高下に利徳あり

米の本体を失わずして 天下第一のめづらしき徳商内としるべきなり」

すわり(保合)には 三平二乗 半扱商内 高安ともに 平乗禁制

すわりには 売転変に買転変、徳を逃がすな 半扱安楽

高安に気の安らかな半扱商内 寝ても起きても徳とれるなり

売買に 徳の乗りたる商内は 半扱商内のすくい場と知れ

安楽商内

「米上がり足なれば 買建の安楽と定め、安き日買い始め、

五分か一割たかき日、商内残らず売り払い徳をとり、

また、五分か一割下がるとき、もとの如く買い取り、また高き日売り払う

この商内の仕方を買建安楽商内という。 売建安楽商内も同意なり  半扱商内より利徳多し」

転変商内

「買建転変、売建転変のふた商内あり。

買建転変の商内は、上がり足の米と見定めたらば、買いを多く、売りを少なく商内すべし。

その仕方は安き日 千両買い、五分か一割たかき日、千三百両売って、三百両売りになる。

また、五分か一割安き日 千三百両買い、もとの如く千両買持ちになる。

是を買建転変商内という。 売建転変商内も右同意の仕方なり 

売り方損商内 了簡違いと思うとき、早く見切り転変して強気となり買うべし。一心たちまち安楽にして徳商内となるべし。
買い方損商内も同意なり」 



高下とも 一割五分の大鞘は いつでも米にむかう理としれ

上がる理と 皆人ごとに 極めたる大鞘ものに はたの種まけ

下がる理と 皆人ごとに 極めたる大下鞘に買いの種まけ

試し玉

いつにても、二割上げては 九分一分 千天元(試し玉)の売旬と知れ

いつにても、三割下げは米崩れ 萬天元(試し玉)の買旬と知れ

上がる理と 皆人ごとに 極めたる大鞘ものに はたの種まけ

下がる理と 皆人ごとに 極めたる大下鞘に買いの種まけ

弱気の理、世に現われ出ればみな弱気、何時にても買いの種まけ

秋の米、から腹上がりまちうけて、二割あがれば売りの種まけ

強変が 現れ出れば 皆強気 了見なしに売りの種まけ

洪水と 大風吹きの 飛あがりは あほうになって売りの種まけ

逆張り

高下とも五分、一割にしたがいて、二割、三割は向かう理と知れ

いつとても買い落城の弱峠、こわいところを買うが極意ぞ

いつとても売り落城の強峠、こわいところを売るが極意ぞ   

向かう理は、高きを売りて安きを買う、米商いの大秘密となり

売買は 五分高下にて 慣らすべし 乗も同じく 五分高下なり

三割の高下にむかう商内は、金の湧き出る泉とは知れ

百年に九十九年の高安は 三割こえぬものと知るべし

分割売買

買い米を一度に買うは無分別。二度に買うべし、二度に売るべし

売買は 五分高下にて 慣らすべし 乗も同じく 五分高下なり

乗せ

高下とも五分一割は乗せがよし、中墨すぎて乗せは馬鹿なり

高下とも長き足には乗せがよし、短か足には乗せざるがよし

材料と人気

万人の気弱きときは米上がるべきの理なり。諸人気強きときは米下がるべきの種なり

万人が心に迷う米なれば、つれなき道へおもむくがよし   

万人が万人ながら弱気なら、のぼるべき理をふくむ米なり 

千人が千人ながら強気なら、くだるべき理をふくむ米なり  

野も山も皆一面に弱気なら、阿呆になりて米を買うべし   

万人が万人ながら強気なら、たわけになりて米を売るべし 

万人があきれはてたる値が出れば、それが高下の界(さかい)なりけり

豊年は 万人気弱く 我弱し 安きによって 売は禁制

凶年は 千人気強く 我強し 高きによって 買は禁制

弱気理 世に現れ出れば みな弱気 安きに依って はたは禁制

強変が 現れ出れば 皆強気 高きによって 買いは禁制

上がり足 短く見ゆる 米ならば 気は強くとも 買いは禁制

下がる理と 手に取るように 思えども 秋穂のうへの 売りは禁制

天性の 理は水無月(六月)に 出ると知れ 米に随い 平乗禁制

洪水と 大風吹きの 飛あがりは いつの年でも 買いは禁制

米崩れ 買い落城の 飛び下げは 気は弱くとも はたは禁制

米枯れに はた落城の 飛び上げは 気は強くとも 買いは禁制

季節的要因

買い時は 端午名月 米ざかり はたは水無月 文月(七月)と知れ

大法が 秋名月が 安峠 五月下旬が 高峠なり

大法が 秋冬五月 はた禁制 春六七月 買は禁制

下がる理と ただしく思う 米にても 四五月頃の はた(売り)は禁制

五月米 人気弱くて 値は上がる 子々孫々まで 売りは禁制





山崎種二の相場の秘法

相場の秘法は三猿金泉録につきています。今昔の差はあっても人間に変りはない。


鈴木 隆の『 ”金泉” 相場 』

  金泉相場とは
1.3ヶ月中心相場 上下約半年
2.6ヶ月中心相場 上下約一年
これである。

それで私は、
上の2つの天底を観察して金泉相場を逃がさずば、泉の如く金が入ってくる。
何人も財を積み、産を成すことを得るものと信じる。

さて、そう肝を決めて 私は金泉相場以外には同士に勧めない。
(中略)一相場は 大体3ヶ月中心と言うべきだが3ヶ月より幾分短いことが多い。
6ヶ月中心相場は三年に一度、異変好況の年は必ずある。
3ヶ月中心相場に比較すれば波乱規模が大きいから、その何倍という動きを見せるであろう。
したがって、3ヶ月中心相場で儲けた幾度の利益よりも、6ヶ月中心相場一つで得た方が利益が大きいことも事実である。

それ故にこの業界の志士は、全知全能をあげ、あらゆる苦難を忍んで、6ヶ月中心相場を逃さないことを希望する。

6ヶ月中心相場の特徴は発足が、始めは穏やかであるが、上げ幅が3ヶ月中心相場に比べると大幅に飛ぶので、 旧来の小相場に慣れた頭で、利が乗ると忽ち利食いしたり、中には売り越したりすることもある。

「林輝太郎投資研究所 研究部会報2003年11月号」p.42より


ある相場師の「三猿金泉録」批判

問題は”値動き”とそれへの”対処の仕方”なんだが、これらの説明については、たとえば、「三猿金泉録」のような、わけのわからないことばかりだ。

三猿金泉録は、相場の聖書のひとつと聞いていたので、本がボロボロになるまで読んだんだ。もう20年以上も前のことだよ。
でもさっぱり駄目。
しかし、この駄目というのは、こちらの心構えが悪いのはもちろんだが、この本には、いわゆる”当てかた”が書かれていて”やりかた”が書かれていないことなんだ。

そういうと、やりかただって書いてあるといわれる。たとえば、三割の高下に向かえ、とか、半扱商内とか二分割して買えとか、ある程度のことは書いてある。

しかし、やるほうにとって切実なこと、たとえば、どういう動きのとき、それを何によって(たとえば、どういうグラフで、とか、どういう場帖をつければよい、とか、それらをどう利用する、とか)受け止めて、玉はどう出すべきか、ということは全く書かれていない。

そういうと、そんな初歩のことはわかりきっているから書かれていない、という。
では、三猿金泉録は、初歩の人を対象に書かれた本ではないのか、と聞くと、中級あるいは上級向きの本だという。
では初級者向きの本はどれかと聞くと、ない、という。

(林輝太郎著「商品相場必勝ノート」P.22より)
 


相場戦略研究所